今回は,1954年東大数学の過去問を解いてみましょう.今の受験生にとっては典型問題となっていますが,当時はあるトラップに引っかかる受験生が多かったそうです.
part 7 のポイント
- 領域の場合でも,逆像法で解くには,条件を満たすパラメータが存在するかという命題を立てる.
1954年 東大理系
$$点\,(x,\,y)\,が原点を中心とする半径\,1\,の円内部を動くとき,点\,(x+y,\,xy)\,の動く範囲を図示せよ.$$
解答はこちら
求める領域を \(W\) とおくと,
\((X,\,Y)\,\in\,W\)
\(\Longleftrightarrow \begin{cases} x^2+y^2≦1 \\ X=x+y \\ Y=xy \end{cases} \,を満たす実数\,x,\,y\,が存在する\)
\(\Longleftrightarrow \begin{cases} (x+y)^2-2xy≦1 \\ x+y=X \\ xy=Y \end{cases} \,を満たす実数\,x,\,y\,が存在する\)
\(\Longleftrightarrow\,「X^2-2Y≦1」かつ \\\qquad「\,t\,についての二次方程式\,t^2-X\cdot t+Y=0\,が実数解をもつ」\)
(実際に,この二次方程式の二つの解を \(x,\,y\) とすればよい)
\(\Longleftrightarrow\,「X^2-2Y≦1」かつ「(判別式D=)X^2-4Y≧0」\)
\(\Longleftrightarrow\,\frac{X^2-1}{2}≦Y≦\frac{X^2}{4}\)
ここで,\(y=\frac{x^2-1}{2}\) の曲線と,\(y=\frac{x^2}{4}\) の曲線の交点は,\((-\sqrt{2},\frac{1}{2}),(\sqrt{2},\frac{1}{2})\) の二点.よって,求める領域は下の図のようになる.ただし,境界部分も含む.

今回は,領域の問題です.パラメータが \(x,\,y\) で,求めたい変数が与えられていませんが,ここでは適当に \(X,\,Y\) とでも置きましょう.
part 6 で求める値域を仮に \(I\) と置いたのと同様に,求める領域を \(W\) と置きます.文字は基本的に何でも大丈夫です.
逆像法では,求めたい変数が,求める領域(または値域)に含まれていると仮定するのでしたね.この問題では,\((X,Y)\,\in\,W\) と仮定します.
その後,この仮定を,「この点に写るようなパラメータが存在する」という命題に書き直します.ここが逆像法の最重要ポイントであり,最難関ポイントでもあります.
あとは,part 6 同様に,解と係数の関係を使いながら,\((X,\,Y)\) の条件を絞っていきましょう.
さて,入試本番に多くの受験生が引っ掛かったトラップについて説明して終わりましょう.
すでにある程度予測がつくかもしれませんが,逆像法の考え方を用いなかった場合,\(x^2+y^2≦1\) という不等式を変形することで,\(X^2-2Y≦1\) を出して終わりにしてしまうミスが多発します.
これでは,\((X,Y)=(0,1)\) という点を含むことになりますが,この点に写る \((x,y)\) を複素数範囲で無理やり求めると,\((x,y)=(\pm i,\mp i)\) (複合同順)が解として出てきます.確かに,\(x^2+y^2≦1\) は満たしていますが,この点は実数平面上にはないですね.
逆像法は,十分条件だけでなく必要条件にもなるように領域を求めているので,上記のようなことは起こりません.逆像法を身につけることの大切さがだんだん理解できてきたでしょうか.
次回は,先ほど触れたことにも関係する,存在命題の同値変形のパターンについて解説します.


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